大人への“不信感”が、声かけのシャワーで“信頼感”へ
数年前のこと、、、
ある高校生の男の子の勉強を
見ることになりました。
その男の子Yくんは、
何をやるにしても無気力になってしまい、
成績が落ち続けて、
高校2年生のときに留年、、、
どうしようもなくなって、
お父さんが
ぼくのいた学習塾に
お願いをしてきたんですね。
Yくんは、話しかけても
ほとんど目を合わさず、
受け答えもそっけない感じでした。
勉強への自信もやる気もなくしていて、
いつも眠そうな様子です。
ぼくは、Yくんのことを知りたい、と思い
話しかけます。
白:「Yくん、最近はまってるものとかある?」
Y:「いや、とくに、、、」
白:「そっか。ゲームとかはやる?」
Y:「いや、親に禁止されてるんで、、、」
白:「そうなんだね。
前はどんなゲームが好きだったの?」
Y:「いや、、、忘れました、、、」
Yくんは、ぼくと話すことに
抵抗感を感じている様子でした。
白:「じゃあ、もし数学の問題とかで質問があれば、
遠慮なく聞いてね。」
Y:「はい、、、」
毎回、会話がはずみません。
勉強の質問もほとんどありません。
Yくんにどう接したらいいか
悩む日が続きました。
でも、なんとかYくんの力になりたい。
その気持ちだけは
折れることはありませんでした。
数ヶ月ほどしたある日、
学習塾の他のスタッフと話していたとき、
ふと彼が
「白根さん、Yくんって、
反応も意欲もないけど、
塾、休みませんよね、、、
不思議ですね、、、」
!!
そうか・・・!
ぼくはそのとき気がつきました。
Yくんは、ぼくたちのことが
嫌いなわけじゃないんだ。
心のより所を求めていたんだ、、、
Yくんに無理に話してもらおうと
しなくていいのかもしれない。
Yくんが、ただここ来て、
ここにいることをちゃんと見よう。
そう思ったんですね。
それからは、
ぼくの“声かけ”は変わりました。
白:「Yくん、今日もよく来たね。
今日は何の勉強しようと思ってるの?」
Y:「数学を、、、」
白:「オッケー。ぼくも近くで勉強してるから、
なんか力になれることがあったら言って。」
また別の日には、
白:「Yくん、びしょびしょじゃん。
外雨だったのに、よく来たね!
タオル貸すよ。」
Y:「いえ、、、大丈夫です。あります。
朝は晴れてたんです、、、」
さらに、他の日には、
白:「Yくん、こんにちは!
バッグ変えたんだね。
新しいバッグでようこそ(笑)」
Y:「前のバッグ、肩のところが切れたんですよ、、、
安かったんで、買いました。」
Yくんが来てくれるだけで嬉しい。
その在り方を持って“声かけ”をし続けたとき、
Yくんの重たい扉が少しずつ開いていくような、
そんな感覚がありました。
そして、Yくんが学習塾に来てから、
半年が経つころ、、、
Yくんはしだいに自分から、
その日の出来事を話してくれるようになりました。
Y:「高校になってまで、
遠足ってどうなんですかね、、、
すごく疲れました、、、」
白:「そっか、今日、遠足だったんだね。
何キロ歩いたの?」
Y:「30キロですよ。
しかも、途中で走るし、、、」
Yくんが以前とは、
明らかに変わってきたんですね。
ぼくだけでなく、
ともに働いていたスタッフの“声かけ”協力もあり、
Yくんはどんどん元気になっていきました。
スタッフ全員で、
Yくんが来てくれて嬉しい
その在り方を持って、
Yくんの心の扉をノックし続けました。
ノックノックとんとん、、、
Yくんは、心の扉を開いてくれました。
勉強の前の雑談を楽しみ、
笑顔が見れるようになりました。
Yくんがみごと志望大学に受かって、
学習塾を卒業していくとき、
スタッフみんなで感動して送り出したことを
今でも覚えています。
ノックノックとんとん、、、
あなたがいてくれるだけで、嬉しい
その気持ちをもち続けて
接するからこそ、
こどもは心の扉を開くのでしょう。