勉強への“やる気”と、“数学的思考力”との共通点とは?
『“やる気”と“数学的思考”のつながりとは』
新潟県の中3生は、
今年は3月3日が公立高校の入試です。
受験が近づくと、
やはり親御さんやこどもたちから
勉強についての相談は増えていきます。
親子塾えすてぃむはフリースクール(自由学校)です。
学習塾のように、
成績やテストの点数に
傾倒しすぎることはありません。
でも、「気持ち」の部分には、
できうる限り寄り添っています。
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ときには、
えすてぃむの教室に入ってくるなり
「しろねさ〜ん、正月から勉強のやる気がでないよ」
と話しはじめる子もいるんですよね。
ぼくも学習塾で働いていたころは、
その責任感から
(どうやったら、勉強へのやる気が出るだろう?
どういうアプローチがその子にとってベストだろう?)
ということを常に考えていました。
でも、フリースクールをやる、
と覚悟を決めてからは、
「やる気を出させるアプローチは、えすてぃむでは必要ない」
という想いにいたりました。
その想いは、
その子が決めた目標に
寄り添わないというわけではありません。
むしろ、その子が決めた目標は、
その子自身のものだから、
取り上げてはいけない、と思うんです。
だから、責任もふくめ
その子自身が負えるようにするのが
えすてぃむでのぼくの役割です。
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ぼくは、こどもが“やる気”の話をしはじめたら、
対話の中で取り入れていることがあります。
「勉強のやる気がでないんだね。
全教科でやる気がでないの?」とぼく。
「全教科っていうか、家だとまったくやる気がでなくて。
冬休みはほとんどやろうと思ってた勉強できなかった。」
とその塾生。
白根:「家だと、っていうことは、他の場所だと
勉強できるの?」
塾生:「学校や公民館の自習室があいてるときはできた。
学校でも受験勉強の質問教室やってたし。
でも、年末年始はやってないじゃん?」
白根:「そうだよね。学校とか公民館では、どの教科やってたの?」
塾生:「学校では数学。「三平方(の定理)」はもう予習終わってる。公民館だと、白根さんからもらった漢字プリントとか、
歴史の一問一答とか?」
白根:「そっか。学校や公民館があいてて、そこで勉強すると調子がいいんだね!」
塾生:「でも、家でももっとやんないと、志望校むずかしいでしょ?」
白根:「データで見ると、模試であと50点必要だね。
今日、えすてぃむでもいっしょに勉強できるけど、やる?」
塾生:「もちろん!今日は、やってきた漢字プリントのチェックテストやる。あと、数学の三平方のわかんないとこ。」
白根:「あと、最後の20分で、歴史の一問一答クイズもやらない?最近めっちゃできてきてるじゃん」
塾生:「それもやりたい!あと、また他の受験生たちとも集まって、ウルトラクイズもやりたい!」
白根:「また学校もはじまったし、できるところからまたスタートしようね!」
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ぼくとこの塾生との対話でのテーマは
「勉強へのやる気」でした。
塾生は「勉強へのやる気」がでないことから、
勉強へのやる気が「すべてなくなった」
と(表面的には)誤解しています。
でも、この対話から、
そんなことはないことが
わかりますよね。
すべてのやる気がないわけじゃない。
家で机に向かおうとするときだけ、
やる気がでないわけです。
まあ、おうおうにして、
自分の部屋はリラックスの場ですもんね。
年末年始のざわざわがあればなおさら。
ただ、その子の気持ちとしては、
そんなことを言ってるヒマはなく、
受験が近づいているので
あせっているわけです。
そのときに大切なことは、
「やる気の分解」です。
「やる気がでない」のは、
どんなとき、どんな場所なのか。
「やる気がでるとき」も部分的にはあるのか。
「やる気がでるとき」には、どんなふうに勉強しているのか。
どんな教材を使っているのか。
そういった事実を整理していくことで、
「じつはやる気がないわけじゃない。
受験勉強という枠組みが大きすぎて、
具体的な行動ができていない」
ということがわかってくるわけです。
もちろん成果を出したり、
点数をあげるためには
「具体的な行動」は欠かせません。
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重要なのは、
「できない部分と、できる部分とを細かく分けて、
できている部分からはじめる」
という思考のプロセスなんですね。
この思考のプロセスは、
「数学的思考」と呼ばれています。
たとえば、
入試に出てくるような数学の応用問題は、
パッと見、すごくむずかしいです。
どこから手をつけていいかわからないくらい。
でも、問題文から、
条件を取り出し、整理して、
「あ、あの公式つかえそう!」
と解決の糸口を見つけるところから
はじまります。
その糸口は、
頭の中で考えているだけではダメです。
ちゃんと書き出して、見える化して、
次の糸口を探す。
すると、次にやるべきことが見えてくる。
(見えてこないこともあります。でも、その場合も途中点をもらえることが多いです)
つまり、
「できるところとできないところをわけて、
できるところからまず取りかかる」
ことが大事ということです。
この数学的思考は、
先ほどの“やる気”の対話とも
似ているのがわかるのではないでしょうか。
「やる気を無理に出させようとする必要はない」
だって、相談してきた時点で、
「やる気」があるのはもうわかっているから。
「やる」と決めたことを「やる」と
だんだんとテンションが上がってくる。
そのプロセスを楽しんでみてほしいな
と感じました。